「パチュリー様っ! 魔理沙が美鈴さんを倒し、館に侵入してきましたっ!」

 慌てた様子で図書館の中へと入ってきたメイド妖精がそう告げる。かなり急いでここまで来たのか、息が上がっている。

「そう、報告ご苦労様。疲れてるでしょうけど、巻き込まれたくなかったら、すぐここから出た方がいいわよ」
「はい、そうさせていただきます!」

 元気よく返事をするなり、脱兎のごとく飛び去っていった。疲れていても、逃げ足は早いようだ。
 さすが妖精。

「はあ……」

 私がそんなことを思っていると、パチュリーがため息を漏らした。先ほどまで読んでいた分厚い本を音を立てながら閉じる。普段は静かに閉じるのに、今はそうでないということはそれなりに心中が荒れているということだ。
 ここにある全ての本を愛しているのだから当然のことだろう。

「フラン、悪いけど、また手伝ってもらえるかしら?」
「うん、いいよ」

 そして、私もパチュリーほどではないけど、本を愛していた。





 出入り口の扉付近の本棚に隠れて、魔理沙が来るその時を待つ。手には、魔杖レーヴァテイン。本物ではないけど、神話の武器の名を冠することで多少の強化が施されている。
 弾幕ごっこ、もしくはそれに準ずるものを行うときは必ず持つようにしている。これは、私の感情が高ぶりすぎたときに魔力が暴走しないようにするための抑制装置なのだ。
 私の魔力が暴走すれば、同時に破壊の力も暴走してしまう。そうなれば、私の周囲にある物は何もかもが無差別に壊れてしまうだろう。そんなことは、絶対に嫌だ。
 けど、だからといって、魔力を使わないというわけにもいかない。使わなければ使わなければで、ある時ふとしたきっかけで暴走してしまうこともあるらしい。だから、程良く使い、上手く制御することで私の魔力の暴走は抑えられるそうだ。私の魔法の師であるようなパチュリーがそう言っていた。
 だから、程良い加減をし、その上で細かな魔力制御を行う弾幕ごっこは私には丁度いいトレーニングとなる。
 そう、私は簡単に魔理沙を捕まえる方法を持ちながらも、それを使おうとはしない。早々にそんなことをしてしまえば、大して魔力を使うこともなく終わってしまう。
 とはいえ、長丁場を作る必要もないから、最初に私が魔理沙とぶつかり、わざと魔力を多く使うような戦い方をすれば、後は大体自由となる。
 大規模に魔法を使う機会がこういう時くらいしかないから、本を盗まれてしまう確率を上げるようなことになろうとも、最初から全力は出せない。本は大事だけど、それ以上に誰も傷つけないということは私の切実な願いだった。

 そういうわけで、私は無駄な戦いをするための準備をすでに終えていた。
 私が隠れているのとは別の本棚に、三体の分身がそれぞれ身を隠して待機している。
 維持をするのにそれなりの魔力と集中力、命令を出すのに細かな魔力制御が必要となる。だから、こうして分身を出し、後は実際に弾幕ごっこをすることで、私のトレーニングに必要な要素は満たされる。
 今回のように、魔理沙が正面から突っ込んできて、その侵入が明らかなときは大抵こうしている。

 この図書館に出入り口は一つしかない。ここで待っていれば、必ず魔理沙と相対することが出来る。そうなれば、後は私がそのまま撃退するか、奥で待機しているパチュリーの所へと向かうように誘導すればいい。

 今回、侵入してきた魔理沙を迎撃するのは、この図書館の主であるパチュリーと、ここで司書のようなものをしているこあ、それから私の三人だ。こあは、退路を塞ぐと言って図書館から出て行っている。
 パチュリーや私のように直接的な攻撃となる魔法が得意ではないこあは、紐に獲物が引っかかった瞬間に反応する網や、巨大なトリモチみたいな罠を仕掛ける。
 成功率は割と高い。

 後、時々だけど、私たち三人だけでなくアリスが魔理沙を捕まえるのに協力してくれることもある。今のところ、アリスが手伝ってくれたときに魔理沙を捕まえられなかったことはない。
 とはいえ、今日はいないから私たちだけでなんとかするしかないんだけど。
 
 まあ、なんであろうと私は本気を出す。私が読もうと思っていた本も度々勝手に持ち出してそのまま返そうとしないから、迷惑しているのだ。全力を出さずとも、本気を出さないと気が済まない。それに、こうした気持ちこそが集中力や魔力制御の精度を高めたりする。

 そうして、静かに気持ちを沸き上がらせていると、扉がゆっくりと動き始めた。少しだけ開いた隙間から、金髪がのぞく。
 ついに魔理沙がやってきた。私は意識せず、杖を握る右手に力を込める。魔理沙の動きを窺いながら、分身たちの制御に意識を向ける。

 金髪に続いて、魔理沙の顔が出てくる。右に左にと金の瞳を動かして、中の様子を窺っているようだ。
 そして、ひとまずの安全は確認できたようでさっと図書館の中へと入ってくる。
 扉が音もなく閉じられる。

 図書館への侵入を果たした魔理沙は、どこからともなく大きな黒色の三角帽を取り出し、それを被る。
 リラックスしているときや本当に邪魔なとき以外にはいつも被っている帽子。直接聞いたわけではないけど、魔理沙なりのこだわりがあるらしい。黒と白の古風な魔女風の衣装と合わせて。

 帽子の位置を調節しながら、魔理沙は辺りを警戒するようにしながら、中央の比較的に広い部分を歩いている。姿だけを見れば悠々としているようだけど、同じ空間にいればわかる場慣れした人間特有の雰囲気を纏っている。
 盗人として、どれだけの場数を踏んできたのかが窺い知れる。

 魔理沙が、私と分身とに囲まれる位置までやってくる。
 私はその瞬間を狙って、分身たちへと命令を飛ばした。同時に、私自身も魔理沙へと向けて弾幕を放つ。
 四方から魔理沙へと向けて四色の弾幕が向かっていく。不意打ちを狙うような形であるけど、どうせ魔理沙には効かないと思っている。何度も同じ手を使っているから。
 予想通り、魔理沙は一切動揺しない。警戒心を解き、私の放った弾幕を一瞬だけ観察する。そうして、どこからか箒を取り出すと、それに跨って飛び上がった。
 魔理沙に避けられた弾幕は交差し、本棚にぶつかる前に消失する。本を守るために、防護の魔法が施されているのだ。

 魔理沙は、上から弾幕を見下ろしていた。
 けど、そこで何かに気づいたように周囲を見回し始める。

 思ったよりも気づかれるのが早い。でも、だからといってここで諦めるつもりはない。一手先は読まれたかもしれないけど、二手先まではまだ読まれていないはずだ。
 分身たちと共に、宙へ逃げた魔理沙へと広範囲の弾幕を放ち、その瞬間に私は姿を消した。今はすでに、魔理沙の背後へと回っている。

 更に感づかれる前に、両手を振り上げた姿勢で姿を現す。
 そして、間髪入れずレーヴァテインに炎のような弾幕を纏わせる。周囲が赤く照らされる。熱気が辺りを包む。

 弾幕は、霊力、魔力、妖力のいずれかがあれば誰にでも扱える。容易に性質を変容させ、炎の熱さ、氷の冷たさも再現することができる。けど、殺傷能力はほとんどなく、当たったときにあるのは軽い痛みと衝撃くらい。だから、誰かを傷つけるのが怖い私でも、割と容赦なく振るえる。
 また、放った本人には決して当たらないという特性まで備えているから、こうして躊躇なく自らの弾幕の中へと飛び込むことができる。

 魔杖から魔剣へと変容したレーヴァテインを勢いよく振り下ろす。すんでのところで、急下降してかわされてしまう。
 けど、これだけでは終わらない。剣を振り回したことで勢いを持った火の粉が、終末の世界へとそうするように降り注ぐ。三方からの弾幕と合わさり、弾幕としての密度が濃くなる。
 魔理沙はそれを的確にかわす。速度を出しているのに、それに振り回されることなく弾幕の隙間へと身を入れ込んでいる。
 降り注ぐ火の粉はそのまま床に落ち、ひねりのない広範囲に広がっているだけの弾幕は本棚の前で消失する。

 今まで何度も私たちの弾幕をかいくぐりながら本を盗み出してきた魔理沙だ。そう簡単に倒せるとは思っていない。それでも、今回考え出した不意打ちがこうもあっさりと避けられてしまったことには衝撃が隠せない。
 また、考え直さなくてはいけないようだ。

 ともかく、もう一度炎の魔剣を振り上げる。その際にいくつかの火の粉が上昇し、ゆっくりと下降を始める。それに合わせるように腕を振り下ろし、分身たちへと命令を飛ばそうとして――

 地面から幾筋もの光線が伸びるのが見えた。

 慌てて回避行動を取ろうとするも、振り下ろしたままの体勢でうまくいくはずもない。結果、そのうちの一本が当たる。

「ぐっ!」

 お腹の辺りに軽い痛み。上へと打ち上げられる衝撃。
 集中が途切れたせいで、分身たちが消えるのを感じる。レーヴァテインからも熱が消え、剣から杖へと戻る。ぎゅっと握り込んでいたから取り落とすことはなかった。
 怯んでいる暇はない。今もなお、途切れ途切れに地面から真っ白な光線が伸びてきている。少々よろめきながらもそれを避け、射程範囲から逃れる。
 どうやら、魔法薬を媒介とした設置型の弾幕のようだ。さっきまで私たちがいた辺りの床に、ガラスと液体が散乱している。液体は、蒸発するように消えていき、光線も発生しなくなる。
 魔理沙はああいった魔法薬も使ってくるから、油断が出来ない。

 それよりも、魔理沙だ!

 奥の方へと視線を向けると、全速力で飛んでいる魔理沙を見つけた。私はそれを全力で追いかける。けど、幻想郷内でも随一と言ってもいい速さを誇る魔理沙に追いつくのは、不可能だろう。
 だから、今の私の速度に乗せて、より速い弾幕を放つ。

 それは白い弾の群れ。けど、徐々に速度を上げ次第に色づいていく。
 魔理沙の所へとたどり着く頃には、はっきりと赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色に分かれる。それらが入り乱れ、虹色を作り出す。
 スターボウという現象があるらしい。光速で飛んだとき、星の白は分離され、七色に見えるそうだ。
 それを模倣した弾幕。実際は円環に見えるらしいけど、それでは攻撃にはならないからその円を壊した。だから、この弾幕はスターボウブレイク。

 私の弾幕に気づいた魔理沙は、時折背後を振り返りながら、七色の光の弾幕を避ける。それなりの密度はあるはずだけど、そんなもの物ともしていないようだ。
 まあ直線的で軌道は読みやすい弾幕だから、魔理沙くらいの実力者なら簡単に避けられることはわかっている。重要なのは、魔理沙が目的の場所へと向かっているかということ。
 その点で言えば、今のところはこっちの思惑通りだ。

 けれど、一方的に攻撃され続けているのは魔理沙のやり方ではない。

 お返しとばかりに、箒の穂先から七色の星形の弾が散りばめられる。それほど速度はないんだろうけど、こちらから向かっていっているから、かなり速く飛んできているように見える。
 身をひねったりして何とか避けてみようとしてみる。けど、魔理沙のように上手くはいかず、肩や腰に被弾する。衝撃に体勢を崩しそうになり、痛みに顔をしかめながらも追う。
 魔理沙をこのまま真っ直ぐと逃げさせるには、これ以上距離を開くわけにはいかないのだ。
 本を守るためと思えば、多少の痛みは我慢できる。

 ほとんど無限とも思えるような広さの図書館の、それなりに奥へと来たところで魔理沙が止まる。いや、止まらざるをえなかったのだ。

 魔理沙の前には巨大な岩の壁。それも、徐々に大きくなっていき、魔理沙を取り囲もうとしている。それに加え、上からは種々雑多な属性魔法を模された弾幕が降り注ぐ。
 巨大な炎が、水の柱が、風の刃が、宝石のつぶてが、お互いに干渉しあいながら複雑な軌道を描く。

 進行方向を塞がれた魔理沙は、こちらへと向きを変える。逃げるのか、迂回して更に奥を目指すのか。
 どちらにせよ、させない。このまま、パチュリーの作り出す岩の壁に捕まってもらう。

 虹色の弾幕を放つのをやめ、代わりに格子状の弾幕を設置する。自分から離れた場所に弾幕を発生させるのは、たくさんの魔力を消費するらしいけど、私は特に問題ない。パチュリーに魔力量の多さは保証されている。
 未だ大きくなりつつある岩の壁の足りない部分を補うように、格子が完成する。中の様子は見えるけど、通り抜けることはできない程度の網目の大きさ。魔力を多めに込めて、当たった瞬間に後方へ吹き飛ばすくらいの衝撃が発生するようにしている。
 魔理沙はそれを感じ取ったのか、正面突破はしようとせず、パチュリーの弾幕を避け続けている。
 代わりに、魔力を練り始める。今までのパターンから何をするかはもはや明確だ。早急に魔理沙を落とさなくてはいけない。

 弾幕の格子を維持したまま、魔理沙を直接狙う形で弾を放つ。広範囲に放って牽制するのは、パチュリーの弾幕だけで十分だ。
 魔理沙の動きにあわせて、赤色の弾を何度も放つ。時には、数瞬後にいそうな場所も狙う。
 けど、ひとつも当たりそうにはない。そもそも、距離が遠すぎるのだ。弾が届くまでに時間がかかってしまえば、どう避ければいいのかはわかってしまう。

 そうこうしているうちに、魔理沙が魔力を練り終える。今にも溢れ出しそうな魔力がこちらまで伝わってくる。
 そして、魔理沙が取り出すのは、八卦が刻まれた小さな八角形の小さな炉、ミニ八卦炉。魔理沙の魔力増幅用のマジックアイテム。

 八つの辺の中心に光が集う。その間も、弾幕を避け続けている。
 焦りが私の内に積もっていく。その焦りに比例するように光は徐々に強くなり、爆発せんばかりの魔力が渦巻き始める。魔理沙の魔力が、光に変換されていく。
 早く止めないと。
 そう思い、弾の速度を上げる。けど、それでも当たる様子はない。片手で箒に掴まったまま器用に避けている。

 そして、ついに莫大な量の魔力が解き放たれた――

 ――私の方へと向けて。

「――え?」

 一瞬、理解ができなかった。てっきり岩の方へと放たれるものだと思っていたのだ。
 けど、理解したとたんに、慌てて身体を霧へと変える。

 真横に延びる光の柱が、弾幕の格子を食い破る。
 私の弾幕はものともしていないようだ。全く威力を殺せた様子が見られない。
 遮る物のなくなった光は、図書館の暗闇をも食いつぶすように直進し、私のいる場所を突き抜ける。
 霧になっているから衝撃はない。けど、視覚と聴覚は働いているから、鼓膜を破くような轟音と真っ白な光の奔流とが強すぎる刺激を与えてくる。
 そのまま、光の柱は扉の方へと進んでいく。きーんという耳鳴りの中、轟音が遠ざかっていく。視界も明滅して、周りの様子はよく見えない。

 けど、光の奔流は過ぎ去った。
 難は逃れたようだ。

 一度当たったことがあるけど、二度と当たりたくはなかった。痛いし、吹っ飛ばされるし、服はぼろぼろになるしで、当たったときのリスクが大きすぎるのだ。

 とにもかくにも、身体を元に戻して、安堵の息を漏らそうとして、

「フラン、どけぇ!」

 少し耳鳴りの残る耳に、魔理沙の声が届いてきた。声のした方へと向くと、若干白く光る視界の中、姿勢を低くしてこちらに進んできている魔理沙が見えた。
 ほとんど反射的に右の方へ飛ぶ。その直後に真横を風が抜けていく。
 冷や汗が、出てきた。

 軽い恐怖でどくどくといっている胸を押さえながら振り返ってみるも、遙か遠くに魔理沙の背中が見えるだけ。
 今から全力で追いかければ、扉を開けようとしている辺りで追いつけるかもしれないけど、まず心臓を落ち着かせないと全力では飛べそうにない。そして、落ち着いた頃にはすでに追いつけないほどの距離をあけられてしまっているだろう。
 どうやら、逃げられてしまったようだ。

「逃げられたわね」

 岩の壁から、パチュリーが顔を覗かせる。あの壁だけは、床の下の土を魔法でいじって作りだしたものだから、簡単には消せない。

「うん、みたいだね」

 私が感知できる限りの範囲の気配を探ってみるけど、私たち以外には誰もいない。すでに魔理沙は、私たちからかなりの距離を取っているようだ。

「けど、今までのパターンから、このまま素直に帰ってくれるとは思えない」

 私もそう思う。
 今日はまだ大技を一度しか使っていないから、魔力も十分残っていることだろう。だから、まだ気を抜くことは出来ない。

「フラン、次は賊を捕らえてやりましょう」
「うん、頑張ろう」

 パチュリーの言葉に強く頷き返した。





 魔理沙は来たときと同じように、扉から静かに入ってくる。左右の確認も怠っていない。
 そうして、私が最初に攻撃を仕掛けたところまで足を進める。けど、今回は攻撃をしない。分身も用意していない。
 代わりに、姿を消し、気配を殺して魔理沙の後を付いていく。気づかれてはいない。
 まあ、よほど魔力を読むのが得意か、気配を感じるのが得意かでない限り気づかれることはないだろう。
 うちの館だと、お姉様とパチュリーと美鈴がそれに該当しそうだ。試す機会がないから、実際はどうなのかわからない。

 行動を起こすときまで暇だから、どうしても考えごとをしてしまう。気づかれないとわかっているから、追いかけることに気を使うこともない。
 最初に派手な弾幕ごっこをして、魔理沙が一時的に逃げたときは、いつもこうしている。
 今のように警戒しながら歩いているときは、不意を突くように背後を取っても簡単に察知され対応されてしまう。けど、本の方へと意識が向いていればその警戒心も薄れ、察知するのも遅れる。
 何度も同じ手を使っているから、本を探している間もなかなか警戒を解くことはない。それでも、ずっと本を探していたら、警戒を解く瞬間が訪れる。
 私はそのときを狙って、魔理沙を捕らえればいい。今はまだタイミングを間違えるときがあるけど、いずれは完璧にタイミングがわかるようになるだろう。本を守るためにならないといけない。
 とはいえ、それまでの間に魔理沙が警戒を解かなくなるようになるかもしれない。その時は、またどうするかを考えなくてはいけなくなる。今までのところ、まだ必要はなさそうだけど。

 そうやって考えごとをしていたら、魔理沙が不意に立ち止まり、どこからか取り出した風呂敷を床に広げた。いつも、あれで本を包んで持っていこうとするのだ。
 油断するそのときをじっと待つ。余計な考えごとはしないようにする。考えるのはどのタイミングで出るか。
 ただ、それだけだ。

 魔理沙が本棚へと向く。背表紙を人差し指でなぞるように触れる。どれから検分しようかと決めているのだろう。
 ……まだ、出るべきではない。もうちょっと本の方へと集中してからだ。

 一冊抜き出し、視線を左右に動かしながらぺらぺらとめくり、すぐに棚に戻す。その作業を何度も何度も繰り返す。
 魔導書なんかは人に読ませるためではなく書いた本人がわかればいいという性質の物も多く、表紙のどこにも題名が書かれていないなんてことは少なくない。それに、題名を見ただけでは内容がわからないものも多い。だから、一冊一冊ああして調べなければ、目的のものが見つかることはない。
 そして、文字を追いかけるということは、それだけそちらに集中しやすいということであり、魔理沙の警戒は薄まっていく。本を探す作業へと没頭していく。
 音が聞こえればすぐにでも反応するだろうけど、今の私は音も気配もなく背後を取ることができる。

「捕まえた」
「うおっ!」

 本を棚へと戻し、指が本から離れた瞬間を狙って、羽交い締めにした。身長差は、浮かぶことで埋める。
 びくりと身体を震わせた後、私の腕から逃れようと暴れる。
 だけど、びくともしない。吸血鬼の中では貧弱な部類に入る私の身体能力だけど、人間ではそう簡単には抗えないだろう。
 しばらくして、逃げるのを諦めたのか身体から力を抜く。結果、私が魔理沙の身体を支えることになってしまう。重くはないけど、このまま離してしまおうかなんて思ってしまう。
 まあ、離すわけにはいかないんだけど。

「全く、本を選んでるときに襲うのは反則だとは思わないか?」
「思わない。そもそも本を盗もうとする魔理沙が間違ってるよ」

 いつものように軽口を言う魔理沙に、呆れながらもそう答える。どうやったら、盗みの現場を押さえられてこれだけ余裕を保っていられるんだろうか。
 慣れ、なのかな?

「盗みじゃないんだけどなぁ……。まあ、降参だ、降参。だから、離してくれるか?」
「本気で言ってる?」

 どうせ私が力を抜いた途端に逃げるつもりだろう。何度も顔を合わせてるから、行動パターンは大体わかってる。

「いーや、冗談だ」

 私が決して応じないのをわかっているのか、すぐにそう言う。こっちからでは長い金髪しか見えないけど、無駄に不敵な笑みを浮かべているのだろう。
 内心、ため息をつきたくなる。

「じゃあ、大人しくパチュリーのところに来てもらうからね」
「私が言うとおりにすると思ってるのか?」

 思っていない。だから、私は羽交い締めにしたまま魔理沙を持ち上げる。軽々と持ち上げられるなら、地面に足を擦らせるよりも完全に浮き上がらせた方が、持っていきやすい。

「なあ、この格好結構辛いんだが」
「そう? まあ、パチュリーのところまで我慢してよ」
「……そうか」

 なんだろう。違和感がある。いつもならここでもっと減らず口を叩いてくるはずなのに。
 魔理沙は、攻撃系の魔法を使うときはマジックアイテムに頼って出力を得ていることが多い。だから、自由に動けなくしてしまえば大丈夫なはずだ。今までだって、こうして捕まえられたわけだし。
 そう思っても、魔理沙の態度には疑いの念を抱かざるをえない。
 怪しすぎる。

「……魔理沙、何か企んでる?」
「いや。私に抵抗する意志なんてない。この状態で何かできると思うか?」
「思わないけど……」

 何かがあるような気がしてならない。でも、どうすればいいのかがわからないから、結局どうもできない。

「そんなに私が信頼できないか」
「うん、できない」

 これまで何度騙されてきたことか。

「そうかそうか」

 声に笑みが含まれている。からかうようなその声に少しむっとするが、それ以上に不審が募る。
 何か、企んでいる。
 けれど、それがなんだかわからないから、少し不気味な感じだ。臆病な私は逃げたがっている。けど、本を守るために離すわけにはいかない。

「ま、賢明な判断だな」

 魔理沙がそう言うと同時に、絨毯の上に何かが落ちる音。それに続いてガラスの割れる音が響いた。
 直後、視界が真っ白に染まる。

「けほ……っ、けほ……っ」

 それは何かの粉のようだ。息を吸う度に気管に入ってきて、咳を誘発してくる。思わず手で口を押さえて、魔理沙を離してしまう。
 魔理沙が離れていく。きっと、風呂敷に包んだ本も持って行ってしまったことだろう。視界の端に、黒い影が少しの間しゃがみ込むのが見えた。
 とはいえ、今はそれどころではない。
 口を塞いで、粉を口の中に入らないようにする。けど、咳が出てくるせいでしっかりと押さえることができず、隙間から粉が入ってくる。
 咳をして、息を大きく吸い込んで、また粉によって咳を誘発され、の悪循環。
 このままでは、窒息してしまうかもしれない。

 急いで上へと向けて飛ぶ。
 目は閉じる。けど、咳が出てくるせいで口は閉じることができない。手で押さえてはいるけど、相変わらず隙間から入ってくる。口の中、喉の奥へと粉が侵入してくる。
 息苦しさに目尻に涙が浮かんできた頃、ようやく粉塵の中から抜け出せた。パチュリーに怒られるかもしれないけど、今は緊急事態ということで本棚の上にうずくまる。
 大きく息を吸おうとして、咳が出てくる。その結果、むせてしまってなかなか息が吸えない。
 それでも、しばらくすれば咳も止まってきて、息を吸うことができるようになってきた。
 息が、上がっている。

 魔理沙を追わないといけないけど、今の状態ではとてもでないけど追うことはできそうにない。
 喉が少し痛んで、今もまだ咳が出そうだ。けど、我慢はできそうだから抑える。胸に手を当てながら、何度か深呼吸をする。
 それで、何とか呼吸は落ち着いてくる。けど、まだ何かが喉に残っているような感じはあって、小さな咳が出てくる。それと、口の中が粉っぽくて不快だ。

 息苦しくならない程度に小さな咳をしながら、さっきまで私たちがいた場所を見下ろしてみる。真っ黒な靴が片方だけ落ちていて、そこを中心として白が広がっている。今もまだ、粉は漂っているようで、ゆっくりとこちらまで上昇してきているものもある。
 また咳込むのも嫌だから、魔法でごく小さな風を起こして押し返す。

 この惨事の元凶は、魔理沙が用意した魔法薬だろう。靴に仕掛けていた瓶が割れた瞬間に、周囲に細かな粉をばらまく煙幕のようなもの。
 今までああいったものは使ってこなかったから、最近考え出したものかもしれない。
 というか、あの粉はなんなのだろうか。小麦粉とか無害なものだとは思うけど……、そう願いたい。まあ、今のところ咳が出る以外に問題は起きてないし、大丈夫だろう。
 ふとあることに思い至って、下を見下ろしたまま自分の服へと視線を向けてみる。そうすると、案の定真っ白になった元赤い服が視界に映りこんだ。
 それと、今まで気づかなかったけど、肩と腰、お腹の辺りに穴があいている。おそらく、魔理沙の弾にぶつかったときにあいたものだろう。魔理沙を追いかけることに集中しすぎていたせいで気づかなかった。パチュリーも教えてくれればよかったのに。
 これを見て怒る人はいない。だけど、洗濯や裁縫をしてくれる咲夜のことを思うと申し訳なく思う。
 とはいえ、魔理沙を追いかけるのをやめることはできない。本を守るためには、服のこともあまり気にはしていられない。

 そんなわけで、魔理沙を追いかけよう。
 息も、落ち着いてきたことだし。





 急いで扉の方まで向かうと、魔理沙は扉の前のパチュリーと対峙していた。
 道を切り開くために魔理沙は星の弾幕を展開し、パチュリーはそれを阻止するために五つの賢者の石を自在に操っている。

 賢者の石とは、パチュリーが使う遠隔操作のできる魔力増幅用のマジックアイテムだ。五つの巨大な宝石のような石にそれぞれ火・水・木・金・土の五大属性が付与されている。
 弾幕ごっこにおいては、私の分身のように弾幕を放つ起点となる。けど、もともとそういう用途のものだから、分身よりも使い勝手がいい。
 少しだけ使わせてもらったことがあるのだ。

 魔理沙は自らの周囲からだけ弾幕を発生させているのに対して、パチュリーは二つの石で遠距離から、もう二つの石で近距離から、そして最後の一つを盾にして対抗している。
 全力で戦うなら五つの属性を考慮して石を動かす必要があるけど、ただ弾を当てて落としたいだけならそこまで考える必要もないそうだ。まあ、人間を相手にするなら全力でも属性は関係ないだろうけど。

 魔理沙は至近距離から放たれる弾に集中しているようで、魔力を練る暇はないようだ。けど、追いつめられているという感じはしない。星をばらまきながら、五色の弾幕を難なく避けている。
 両者は拮抗しているようだ。
 ならば、私がそこに関与すれば、それは崩れてこちら側が有利になるはずだ。

 ある程度二人に近づいたところで、真っ赤な四本の光の剣が延びたような大きな光弾を投げる。光の剣は時を刻むようにゆっくりと回転している。
 これだけならかなり避けやすいけど、弾幕と組み合わせることで、かなり避けにくくなる。この光弾の役割は相手の動きを制限することなのだ。

 私に背後を取られたことに気づいた魔理沙が、一瞬だけこちらを振り返って、嫌そうな表情を浮かべる。私の攻撃が効果的に働いているということで満足する。
 けど、パチュリーの弾幕をかき消さないよう脆く作っているから、ある程度弾幕の中へと入り込むと消えてしまう。だから、間断なく光弾を投げ入れて、魔理沙の余裕を奪っていく。
 魔理沙はパチュリーを倒すことに集中するつもりのようだ。星の弾幕は一切こちらを狙ってこない。
 だから、私は光弾を作ることに集中できる。何度も光弾の耐久力を調整して、一番効率のよくなる耐久力を探す。

「……ごほっ」

 けれど、不意に聞こえてきた重い咳によって、そんなことを考える余裕はどこかへと吹き飛ぶ。

「パチュリー!?」

 パチュリーの放っていた弾幕が消え、賢者の石が重い音を立てて床に転がる。
 その中央でパチュリーはうずくまって何度も咳をしている。しかも、その合間に聞こえてくる息遣いには、喉に何かが詰まっているような異音が混じっている。
 このタイミングで喘息の発作が起きてしまったようだ。

「パチュリー、大丈夫!?」

 慌てて駆け寄るけど、私にできることはない。万が一、発作がひどすぎて動けなくなったときに備えて、心の準備をしておくことくらいしかできない。
 この間に魔理沙は逃げてしまう。だけど、パチュリーを置いて追いかけることはできない。
 だから、今回は見逃してしまうほかない。

 パチュリーは苦しそうに咳をしながら、懐からL字に曲がった物を取り出す。その短い方を口にくわえると、長い部分の上端を押す。すると、シュコーという細い空間を風が抜けるような音が静かな図書館の中に響く。
 それは、喘息持ちであるパチュリーの発作を抑えるための薬を喉へと吹き付けるための道具。お姉様がパチュリーの為に、永遠亭からもらってきたものだ。
 外から流れ着いた本に書いてあったけど、確か「定量噴霧式吸入器」とかいう名前だったはず。そう、外の技術を使って作られた貴重な物なのだ。

 パチュリーは、L字のそれを口から離すと、咳をしながら喘ぐように息を吸う。目尻には先ほどの私のように涙がうっすらと滲んでいる。けれど、その苦しさは私が体感したものとは比べものにならないものなのだろう。咳の重さから、そう思う。

「……大丈夫?」

 手持ち無沙汰でいるのも不安で、意味がないとわかっていながらもパチュリーの背中をさする。息を整えるように大きく息をしていて、肩が上下している。

「……ええ、大丈夫よ」

 しばらくして、大きな息を吐いた後にそう言った。まだ少し呼気が掠れているけど、もうしばらくすればそれもよくなるだろう。

「よかった……」

 安堵のため息を深くつく。魔理沙のマスタースパークを避けたときの比ではなかった。
 全身から力が抜けたのがわかる。

「最近調子がよかったから、調子に乗りすぎたかしらね。……はあ」

 自戒するようにそう言った後、ため息をつく。まだ、喋るのは少し苦しいのかもしれない。

「あー……、本、持ってかれたわね」
「……うん」

 悔しそうに呟く声に頷く。
 私も本を持っていかれたことは悔しく思う。けど、こうしてパチュリーが無事で良かったと思っている私もいる。
 まあ、そもそも魔理沙が来なければパチュリーの心配をする必要もなかっただろう。発作の原因は、弾幕によって巻き上がった埃だろうから。

「でも、諦めるには早いわね。こあの方の成果に期待しましょう。成功率で言えばあの子が一番だし」

 そう言いながら、パチュリーが立ち上がる。少しふらついたようだけど、すぐに安定する。

「大丈夫?」
「ええ、もう平気。心配かけさせたわね。……って、フラン、貴女かなりひどい格好してるわね」
「あ! そうだった!」

 呆れたように指摘されて、今自分がどんな状態かを思い出す。一応、粉は落とせるだけは落としてきたけど、まだ服に付いているのだ。
 慌ててパチュリーから距離を取る。また発作を起こさせるわけにはいかない。

「お気遣いありがとう。……それにしても、今回の片づけは面倒くさそうね」

 パチュリーが再びため息をつく。今度は、精神的なものだった。
 あの粉がどれだけ広範囲に広がったかはわからないけど、確かに大変そうだ。

「パチュリー様、パチュリー様! 魔理沙さんを取っ捕まえましたよ!」

 噂をすれば影がさす。
 不意に、開けっ放しの扉からこあが顔を覗かせた。その顔には喜色が浮かんでいる。
 どうやら、終わりよければ全てよしとなりそうだ。





 こあに先導され、しばらく廊下を歩いていると、何かに絡まったように宙に浮かぶ魔理沙。そのかたわらに、人形を従えて立つアリスを見つけた。
 どうやら今回の手柄はアリスの手によるもののようだ。こあにでも頼まれて、いつものように廊下に見えない魔法の糸を張り巡らせていたのだろう。
 アリスの仕掛ける魔法の糸を避けるのは至難の技だ。そして、一度捕まってしまえば簡単には逃れられない。

「アリスさん、お二人を連れてきましたよ」
「ん、ありがと」

 こあの言葉に頷くと、アリスがこちらへと振り返る。

「こんにちは、パチュリーにフラン。あら、フランは酷い格好してるわね。後で直してあげましょうか?」
「うん、お願い」

 人形を手作りしているアリスは、人形用の服だけでなく普通の服を作ることもできる。だから、服の修繕もできるのだ。
 アリスがいるときは、大体アリスに服を直してもらっている。

「了解。着替えたらその服、図書館に持ってきてちょうだい」
「わかった」

 アリスの言葉に頷く。なんとなくだけど、咲夜に頼むよりはアリスに頼む方が気が楽だ。それは多分、咲夜にはいつもお世話になってるというのと、アリスが楽しそうに針を動かす姿を間近で見ているからだろう。

「で、パチュリー。あいつの始末はどうするの?」

 アリスが言っているのは魔理沙のこと。今もまだ宙に吊り下げられたような状態のままだ。
 時々もがいてるけど、逃げられそうな様子はない。意識を集中させてみると、魔力の糸が魔理沙を雁字搦めにしているのが見える。アリスがその拘束を解かない限りは、満足に動くこともできないだろう。
 アリスがいるときに魔理沙が来れば、必ず捕らえられる。今のところ、アリスがいて魔理沙に逃げられたことはない。

「いつもどおり好きにしてちょうだい」
「そう? たまにはパチュリーやフランが直接手を下してもいいのよ?」
「そうだそうだ! フランだって本当はやってみたいと思ってるんだろっ?」

 見えない糸に絡まったまま、魔理沙が必死な様子でそう言ってくる。魔理沙が何を考えているのかは、大体わかる。
 私でも、アリスとこあが一緒にいるときは悪のりを始める前に逃げたくなる。なんらかの手を下されるとわかっている魔理沙なら、尚更のことだろう。
 けど、魔理沙を助ける理由はない。

「ううん、そんなことないよ。今日は、こんなひどい状態だから早く着替えたいし、私だとアリスやこあみたいに非情にはなれないよ」
「非情とは失礼ね。ちゃんと温かい心を持って適度にいじってるじゃない」
「そうですよ。悪戯は非情な心の持ち主では決して成し得ない崇高な行為なんですよ」

 二人ともこういう性格なのだ。
 人をいじることを趣味にしている二人から手を下されるとなると、気が気ではないのだろう。おしおきの執行者を私に変えたいという気持ちもよくわかる。
 嫌なら盗みに来なければいいのにと思うけど、言うだけ無駄だろうから言わない。以前そう言ったとき、「頼んで借りるのは簡単だ。けど、苦労して借りた方が達成感が大きいだろう?」と返ってきた。
 魔理沙の中に無断借用イコール窃盗の等式は存在しないらしい。本当、迷惑な限りだ。

「じゃあ、私もそういうことをよくわかってる二人に任せるよ」
「残念ね。フランも加わるなら、極意を教えてあげようと思ったのに」

 どうやら、どっちに転がろうともアリスは魔理沙へのおしおきの執行者となるつもりだったようだ。きっと、こあもきっと同じ心づもりだったのだろう。アリスと同じような表情を浮かべている。

「じゃあ、こあ。頼んでた物を用意してちょうだい」
「わかりました!」

 そう言って、こあは近くの扉を開けると、バケツを取り出した。中には大量の絵筆が入れられている。
 アリスは大量の人形を召喚し、筆を一本ずつ持たせる。こあもアリスも筆を一本持っている。
 なんとなく二人が何をするつもりなのか想像がついた。

「おい待てお前らそれで何するつもりだっ!」

 魔理沙が首だけを動かしてこちらを、わざとらしくじりじりと近づいていっているアリスとこあと人形たちを見る。

「あら、この状況を見て分からないかしら?」
「でも、大丈夫ですよ。わからなくても、これから身をもって知ることになりますので。ふふふふ」
「やめろ! 近づくなーっ!」

 魔理沙の叫びが廊下に響く。けど、無情にもそれに答える者も、応える者もいない。

 まあ、自業自得と言うことで甘んじて罰を受けてもらうこととしよう。


 こうして今日の図書防衛は終わった。

 私が着替え終わった頃には、図書館のテーブルに図々しくも突っ伏している魔理沙がいるだろう。
 そして、アリスとこあによっていじられているのだ。図書館の静寂も完膚無きまで壊されていることだろ。

 けど、そんな騒がしい日常も悪くはないなんて思ってる。

 そのきっかけが、魔理沙の盗人行為でなければ最高だ。
 まあ、そんなこと望むだけ無駄なんだろうけど。


Fin



短編置き場に戻る